▽概要
アニオン系電着塗料に用いられる水系塗料は、水溶性または水分散性タイプのもので、分子中にカルボキシル基を持ち、酸価が高く、アンモニア、有機アミンまたは無機塩基などで中和されているものです。したがって、本質的には一般水系塗料と変わりませんが、電着塗装の特徴的な特性であるつき廻り性(スローイングパワー)、電着効率、ターンオーバーの安定性が良いことです。
▽電着効率(クーロン効率)
塗膜形成の速さまたは付着塗膜の厚みは、通電した電気量に比例します。すなわち電着の効率の良否を判断するのに1クーロン(1アンペア×1秒の電気量)あたり付着する塗膜の重量(mg)をもって示し、電着効率と仮称し、通常15~20mgほどの値となります。大きいものは電着効率が良いことになり、低電流(低電圧)短時間で所要の塗膜厚が得られます。
▽スローイングパワー(Throwing Power)
塗料のつき廻り性ともいわれ、複雑な形状の被塗物の合わせ目、ポケット、くぼみ、および箱状部分の内部まで均一に塗膜が付着するのを評価するメジャーして用いています。電気の作用で塗料粒子または樹脂イオンを付着させる場合には、対電極から被塗面までの距離の長短、または、電気力線分布の粗密により、付着速度が部分的に異なります。
この付着量の比を重量百分率で表わした値をスローイングパワー値と称し、この値の大きいものほどつき廻り性が良いとします。スローイングパワーの測定法は色々ありますが、測定した値が通常70~90%を示せば、実用上支障はありません。
▽槽内塗料の安定性
電着が進行するにつれて、陽極に発生した酸素や、浴中に混入する空気により、電着塗料中の樹脂が酸化重合され、高分子化したり、あるいは槽内液中のアルカリにより加水分解されて低分子化してしまいます。そのため、初期の樹脂の分子量分布と幾分ずれたものになり、電着がスムーズに進行しなくなります。一方電着進行するにつれて槽内塗料は、被塗物の大きさ、数量、通電時間などにより消費されていきます。この消費の度合いをターンオーバー値(槽内塗料の回転率)、すなわち槽内塗料の塗膜形成成分総量に対する消費された塗膜形成成分総量の比で表します。ふつう1か月0.3以上を必要とし、少ないと安定したライン稼働が期待できないとされており、ターンオーバーが遅い塗槽内塗料の消費と分解のバランスが崩れ電着がスムーズに進行しなくなります。