カチオン電着は被塗物を陰極として直流通電して塗装する方法で、したがって、電着槽内塗料は(+)に解離する必要があります。すなわち一般には分子中に多数のアミノ基(-NR2)を持つポリアミノ樹脂が用いられます。基本骨格をなす樹脂としてはエポキシ樹脂(ビスフェノール型)に1~4級のアミン(一般には2級アミン)を付加することにより得られたポリアミノ樹脂で、通常有機酸で中和し水溶化あるいは水分散化されて(+)に荷電しています。電着過程においてはポリアミノ樹脂は陰極表面(被塗物)に向かって移動し、陰極表面のpHの上昇により樹脂は凝固し、被塗物表面に塗膜を形成します。しかし、実際には、このままで硬化しないので架橋剤としてイソシアネートを用いるのが一般的です。イソシアネート化合物としてはトリレンジイソシアネート(TDI)で、この場合、イソシアネートを一価アルコールでブロックした後、残存するイソシアネートをポリアミノ樹脂中の水酸基、またはアミノ基と反応させて樹脂中に導入します。
または、全てのイソシアネートを一価アルコールと反応させて、ポリアミノ樹脂と混合して用います。硬化反応は電着、水洗後、加熱によりイソシアネートをブロックしている一価アルコールが揮発し、直ちにエポキシ樹脂と反応する形態をとります。この場合ブロック剤が脱離して、揮発するため、ブロック剤が煙またはヤニにならないように選択する必要があります。ポリアミノ樹脂を可溶化するため用いられる酸は酢酸またはその誘導体が多いです。