電着塗装は現象的には、電気泳動(Electrophoresis)、電気析出(Electrodeposition)、電気浸透(Electroosmosis)、電気分解(Electrolysis)の4つの現象が組み合わされたもので、前二者は極板付近における塗料粒子の移動にあずかり、後二者は付着にあずかる現象です。
すなわち、アニオン系水溶性樹脂塗料について考察してみると、この塗料はあみん類で中和された親水性合成樹脂と顔料及び少量の添加剤よりなり、これが水を媒体として塗料状態に分散されたもので、塗料液中で顔料は樹脂を吸着し安定なコロイド状態を保ち、樹脂の一部は高分子電解質としてイオン状態に解離していると考えられます。塗料は顔料を中心に樹脂を吸着し、その界面において電気二重層を形成し、全体として負の電荷をもった塗料粒子と、その他少量と思われるイオン化樹脂陰イオンおよびアンモニウム陽イオン、ほか金属イオンよりなり、これらが混在状態にあると考えられます。これに両端板より直流電位差が与えられると、負に荷電またはイオン化している塗料主成分は陽極側に(被塗物)に移行し、逆に正の荷電またはイオン化している成分は、陰極に移行します。
陽極側(被塗物)に付着した塗料粒子(顔料を抱いた樹脂)は放電し粒子自身に電荷を失い、樹脂は元の水不溶性に戻るとともに陽極反応における酸化反応を受け、ますます水不溶化が進み、均一な樹脂膜を形成します。するとそれが隔膜となって電気浸透現象によって塗膜内の水分は外部に押し出され、塗膜の脱水が自動的に行われます。したがって、塗膜は激しく水洗しても溶出せず、また塗膜中の含水量も5~8%程度になっています。