燃焼排ガスのばい煙の性状は、発生源施設の種類や形式、構造、燃料や原材料の種類や構成、燃焼条件あるいは操作条件によって著しく変化し、集じん装置の性能を大きく左右します。集じん率に影響を与えるダストの性状としては、粒径分布、濃度、密度、成分分布、見かけ電気抵抗率、吸湿性、付着性など、また、ガスの性状としては、ガス量、水分量、露点、粘度、温度、成分、密度、圧力などがあります。
一方、安全性の点からダストおよびガスの爆発性、毒性が、また、耐久性の面から腐食性、摩耗性などの問題があります。
主な発生源からのダストの濃度と粒径は表のとおりです。また、汎用的に使われている微粉炭燃焼ボイラーと重油燃焼ボイラーの特徴を次に示します。
微粉炭燃焼ボイラーのダスト濃度に最も影響を与えるのは石炭中の灰分で、灰分が多いほどダスト濃度は高くなります。また、ダストの粒度に最も大きな影響を与えるのは石炭の微粉度で、微粉度が細かいほど粒径分布は細かくなります。
また、およそ粒子径45μm以下の微粒子は微粉炭の完全燃焼に伴って灰分がいったん溶融し、温度降下によって凝縮し生成するためきれいな球状をしています。一方、粒子径45μm以上の粗粒子は、微粉炭の不完全燃焼に伴って生成したもので、不規則な形状をしています。
ダストの密度は2.1✕10^3kg/㎥で、かさ密度は700kg/㎥程度であります。ダストの主成分は二酸化ケイ素(シリカ、SiO
2)、酸化アルミニウム(アルミナ、AI
2O
3)になります。二酸化ケイ素が多いほど、酸化ナトリウムや未燃カーボンブラックが少ないほどダストの見掛け電気抵抗率は高くなります。また、排ガス中の水分とSO
2は多いほど見掛け電気抵抗率を低下させる効果があります。
重油燃焼ボイラーでは、酸素量を絞った運転(低酸素燃焼)を行うと、三酸化硫黄(SO
3)および一酸化炭素の生成量は少なくなりますが、未燃カーボンが増えます。ダスト濃度は0.1~0.2g/㎥
N程度でありますが、近年の低硫黄重油では一般に0.1g/㎥
N以下に減少しています。ダストの粒径分布はボイラーの構造や燃料の相違によるばらつきが極めて少ないです。
ダストの形状は、粒子径20μm前後の比較的粗いアッシュ、コークス状の多孔質粒子と、粒子径0.01μm程度の極めて微細なカーボンブラック主体で、一般にカーボンブラックは30%前後含まれており、相当に凝集しています。燃焼ガス中には通常11%程度の水分と20ppm前後のSO
3が含まれ、ダスト表面に吸着されて酸性ダスト(アシッドスマット)を生成します。
表.主な発生源施設からのダストの特徴
発生源施設 | 濃度 | 粒径 |
微粉炭燃焼ボイラー | 高品位炭 20g/㎥N 低品位炭 35~45g/㎥N | 中位径 15~35μm |
重油燃焼ボイラー | 0.1~0.2g/㎥N | 粒子径 20μmと0.01μmの 2種類 |
黒液燃焼ボイラー | 5~6g/㎥N | 中位径 0.1~0.3μm |
焼結炉 | 0.5~2.5g/㎥N | 粒子径 5μm以下20~60% 粒子径 10μm以下30~50% |
転炉 | スタビライザー入口 15~25g/㎥N ガス回収の場合一次集じん装置入口 70~80g/㎥N | 中位径 0.2μm |
電気炉 | 発生場所 10~30g/㎥N 集じん装置入口 2~10g/㎥N | 中位径 0.1μm前後 |
鋼鉄用溶鉱炉 | 3~5g/㎥N | |
セメント製造炉 | 操業条件により著しく異なる | |
骨材乾燥炉 | 50~60g/㎥N | 粒子径 10μm以下20~30% |
非鉄金属溶解炉 | 10~30g/㎥N程度 | |
ディーゼル機関 | 重油燃焼ボイラーの1/3 | 粒子径 20μmと0.02μmの 2種類 |
ガスタービン | ばいじん濃度低い | 粒子径 0.01μmのカーボン ブラックが主体 |